【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ

 シルウィンにとっては初めての王都。胸を躍らせながら向かったが、そこでシルウィンは長く馬車に乗ったことで、気分が悪くなってしまった。会場では、辺境よりも大規模なパーティーにより人に酔い、助けを求めようとした母は王都の夫人と重要な会話をしている。

 自分で何とかしなければとシルウィンは外の空気にあたりに行った。そこでうずくまっていると、少年に声をかけられたのだ。その少年を初めて見たとき、シルウィンはまるでおとぎ話から出てきた王子様が現れたのだと思った。

 そして少年はシルウィンを介抱し、彼女は深い感謝をしてせめてものお礼にと、自分の刺繍をしたハンカチを渡した。そして名前を尋ねると、去り際に少年は名乗ったのだ。「カーティス・ディルセオン」と。

 以降、シルウィンの中で、自分の夫となる男は「カーティス様と同等、もしくはそれ以上の顔がいい男」という明確な基準が出来たのである。ならば何故シルウィンはカーティスと結ばれようとしないのかと言えば、ディルセオン家は王都の公爵家であり、リグウォン家と接点はほぼ無い。シルウィンがいくら希望しようと、カーティスと接点を持つことは無理な話であったのだ。

(……私に相応しい男がさっさと現れてくれないと、行き遅れてしまうわ。神様ももう少し急いでくれないかしら。この美しい私の血統が損なわれるなんて、世界の損失だわ)

 シルウィンは会場を見渡す。そして自らに注目する男たちに微笑みかけながら、内心では盛大にため息を吐いた。

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