【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ
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「大変だ!」
シルウィンの婚約者探しという名目を隠して開かれた夜会から十日。シルウィンが朝から早速湯あみをし、侍女に頼らず自らの手で髪に香油を滑らせ、櫛で自身の髪を入念に整えているとシルウィンの父が大きな足音を立てて部屋へと入ってきた。シルウィンは父の動揺する様子に、櫛を動かす手を止めた。
「お父様? 一体何が起きましたの?」
いつもであれば、ノックをしてから入ってほしい。そう言うシルウィンだが、櫛を机に置き、きちんと父に向き直る。すると手紙を握りしめたシルウィンの父は汗をだらだらと垂らしながら、肩で呼吸をするばかりで全く言葉を話さない。
(お父様、普段はどんなに鍛錬を重ねても汗一つかかないのに。今日はどうしてまた……)
シルウィンが疑問を抱えながら父に近づき、声をかけようとしたその時だった。シルウィンの父は「お前の、お前の」とうわ言のように言葉を紡ぎ始める。
「大変だ!」
シルウィンの婚約者探しという名目を隠して開かれた夜会から十日。シルウィンが朝から早速湯あみをし、侍女に頼らず自らの手で髪に香油を滑らせ、櫛で自身の髪を入念に整えているとシルウィンの父が大きな足音を立てて部屋へと入ってきた。シルウィンは父の動揺する様子に、櫛を動かす手を止めた。
「お父様? 一体何が起きましたの?」
いつもであれば、ノックをしてから入ってほしい。そう言うシルウィンだが、櫛を机に置き、きちんと父に向き直る。すると手紙を握りしめたシルウィンの父は汗をだらだらと垂らしながら、肩で呼吸をするばかりで全く言葉を話さない。
(お父様、普段はどんなに鍛錬を重ねても汗一つかかないのに。今日はどうしてまた……)
シルウィンが疑問を抱えながら父に近づき、声をかけようとしたその時だった。シルウィンの父は「お前の、お前の」とうわ言のように言葉を紡ぎ始める。