青春の花は素顔に咲く


 階段を上る足取りが、すごく重くて。
 時間が異常に長く感じられた。
 理事長室に白銀が入っていくのすら、スローモーションに見えた

 来ないでほしかった。でも来てくれてうれしかった。そんな二つの気持ちが交差してく。馬鹿みたいだけど、それは事実で。

「あなたが白銀カケルくんね!?」
「……はい、オレが白銀カケルです」

 白銀につかみかからんばかりににじり寄るお母さんを見て、止めること
もできないあたし。白銀は冷静に冷静に頭を下げて答える。

「私の芽以に骨折までさせて! なんなの!」
「すみません、オレが悪いんです」
「そうよ! 貴方が芽以に勉強教えさせるから……! こんな格好までさせて……何様なの!?」
「本当に、申し訳なく思ってます」
「じゃあ、やめてよ! こんなことしないで頂戴!」
「それは……」

(いやだ。あたしは白銀に勉強を教えたい)

 離れ離れなんかなりたくない。

 何を言われても、嫌だ。

 なのに、それを口にできないあたしがいて。
 情けない。
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