その夢をどうしても叶えたくて
私は部活を欠席したので、一人で帰宅している。電車に乗って一息ついた。
家になーせくんが居ると思うと、なぜか気持ちが楽で居られた。
家に帰って自分の部屋に入ると、なーせくんが笑顔で手を振ってくれた。これは、おかえりという意味だろう。
なーせくんが私の手を取った。その瞬間、黒いオーラーに囲まれた。
オーラーが晴れたら、全く違う誰かの部屋に居た。
「ここは、なーせくんの部屋だよね?」
とても綺麗な部屋であるが、クローゼットの方から腐敗臭が漂ってくる。
私は恐る恐るとクローゼットを開けた。そして、一気に血の気が引いた。
「グロい……」
そこにあったのは、なーせくんの死体だった。内臓も全て抉り取られていて、顔だけ残ってるような状態だった。
私はその場にしゃがみ込んで、口を押さえた。あまりにもグロテスク過ぎて、吐き気がする。
なーせくんは死んでいる?でも、普通に触れ合うことが出来た。なら、何で彼はこの世で生きられているの?
――俺は人間じゃないのかもしれない。
昨日、気絶して目を覚ました時に見せられたノートに書かれてあったなーせくんの言葉。
瞬間移動も出来たのだから、きっと彼は別の……いや、偉大なる生物になったのだろうか。
漫画で似たような話を読んだことがある。まさか、それと同じようであれば彼は……。
すると、なーせくんが私の背中に触れた。すごく申し訳なさそうな顔をしていた。
「なーせくん、一回メンバーに会ってきて伝えた方がいいよ……」
メンバーのみんなと相談した方が……。
「ヴッ……」
吐きそうになった私に気遣って、なーせくんがゴミ箱を持ってきてクローゼットを閉めた。私は思いっ切り吐き出してしまった。なーせくんが優しく背中を撫でてくれた。
さすがにあれはグロテスク過ぎて、気持ち悪くなってしまう。なーせくんの体なのに、申し訳ない。
「……埋葬したりしないの?」
自分の死体だからといって粗末に扱うのはよくないだろう。
でも、なーせくんは苦笑いを浮かべている。する気は全く無さそうだ。でも、それはなぜだろうか。
なーせくんが私を背中から抱き締める。気が付くと、私の部屋に居た。
「奏!ご飯よ!」
「はーい!」
お母さんの呼ぶ声が一階から聞こえ、大きな返事をした。私はなーせくんに手を振ってから急いで部屋を出た。
ご飯とお風呂を済まして部屋に戻ると、なーせくんの姿は無かった。もしかして、メンバーのところに行ったのかな。
スマホを開いてみると、りょうくんの生放送中の通知が入っていた。時刻は九時半で、放送は終わりを告げる時間である。
開いてみると、メンバーが全員で集まっていた。
『なーせくん大好き!!』
メンバー全員が涙声でなーせくんにそう言った。リスナーさんもそうコメントしていた。私は心が温かくなった。
『えっと……嬉しい!ありがとう!だって!』
りょうくんが音読してくれてる。なんて平和なグループなのだろう。
十時になった。今日はなーせくんは戻って来ないだろうと思い、私は先にベッドに入った。