王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
 テーブルについた虎が、にこにことおれと町田を交互に見ている。
「わ。おいしい」
 町田の社交辞令に満足した虎の期待にこたえるべく、おれもうなずいてやる。
「よかったぁ」
 やっと虎も「いただきまーす」
 妹だったら、どんなに愛らしいだろうなんて。
 もう夢にも思っちゃいけなくなったんだな。
 しんみりしたおれを町田が見ていた。
 顔に出さなくてもみんなバレる。
 本当にいやなやつだけど、今は相棒だ。
 なるべく早くカタがつくことを祈ろう。
「ねえ、兄ちゃんはなんで一海(ひとみ)さんのこと町田なんて呼ぶの? おれ、いいよ。普通にしてくれて。…っていうか、そのほうがうれしいな」
「…………」
 町田にいやがらせをしたツケが、こんな形で返ってくるとは。
「一海さんは? 兄ちゃんのこと、ずっと加藤さんなの? 兄ちゃんもきれいな名前だよ? 名前で呼べばいいのに」
「…………」「…………」
 町田がなにやら合図している。
 おれには無邪気にしか見えない虎が、なにかを抱えているらしい。
「おれなんて……変でしょ? 全然弱っちいのに、虎之介…なんて」
 町田が今やすがりつくような目でおれを見て硬直する。
 だめだ、町田。
 本当におれには見えねえ。わからねぇ。
 五十嵐は泣いた。
 木村は憎んだ。
 だから、おれにはおれのいるべき場所が見えたのに。
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