王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。

「ねえ、兄ちゃん。おれ、まだここにいていい? 一海(ひとみ)さんとふたりがよければ遠慮するけど」
 虎がおれの腕にするっと腕をからめてくると、町田が目に見えて肩の力を抜いた。
「遠慮しなくていいよ、とんちゃん。加藤さんが一番大事なのは、とんちゃんだからね」
 なんだ? 
 押しつけられている虎の身体がじわっと熱い。
 思ったときには虎は跳ねるように立ち上がり、町田の後ろにまわって、その首に両腕を巻きつけていた。
「一海さん、好きっ」
「…………」
 15年間、見たこともないほど虎はかわいかった。
 こんなに無防備にひとに甘える虎を俺は知らない。
 おふくろにも親父にも、じいさんばあさんたちにも期待されて。
 年齢よりずっとおとなびた優等生。
 それでもおれにだけは甘えてくれる虎を、おれはずっとかわいいと思ってきた。
 でも町田に甘えている虎は全然ちがう。

 ――女…だ!――

 思いさしたことにおびえたおれの膝に、テーブルの下でそっと町田の手がのった。
 なんてこった。なんてこった。
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