王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
 それにしたって、町田の思いついた、おれの体調不良の理由はひどすぎだ。
 知恵熱?
 幼稚園生かよ。
 しかも本当におれを放置して、虎と並んで仲良くお勉強。
 まあ、おかげで不安も動揺も隠さずに、虎のそばでソレを待てるのはありがたい。
 町田は、なるべく虎の近くでさりげなく待ちましょう、と言ってくれた。
 おれもそう思う。
 相手は虎の電話番号を知っている。
 町田がいれば、おれにもわかる。
 わかれば即、ひんむいてやる。
 おれにはもう隠せないように。
「わあ。とんちゃん、ずいぶん進んでるんだね。これ学校の課題? もうほとんど終わっちゃってるじゃない、ペーパー」
「あ…、うん。学校の宿題はみんなさっさと…終わっちゃおうと…思って」
「それにしても一晩でこんなに? 実は数学は得意なの?」
「ううん。兄ちゃんと違って苦手だから、一所懸命、先に…やっちゃうの」
 町田がおれを見ている。
 天井を向いていても気配でわかる。
 虎がやばいところに足を突っこんだらしい。
 どうしよう。
 町田の不安は見えるのに。
 本当におれには虎が見えない、わからない。

 ――王女さん――
 一度だけ。
 一度だけ、お願いします。
 おれは早く終わりたい。
 早く楽になりたい。
 早くソレの首根っこをつかませてくれ!


 願いは届いた。
 虎のスマホが震えだす。
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