王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。
「兄ちゃんが消してくれれば――おれは…いい」
「えっちな画像とかあるかもよ? あいつの弱み、握ってやれば?」
「そういうの…、おれ、いやだ」
 そうだな。
 それがおれの、かわいいかわいい弟だ。
 背を押して歩きだしながら背中をぞくぞくっと伝った戦慄。
「おまえ――、このかっこで、おれってのは」
「兄ちゃん」
 思いつめた瞳。
「そのことは――3年半、待って」
「…………」
 虎はおれに肩を抱かれ、おれのシャツのすそを握ってはいるけど、まっすぐひとりで歩けている。
「おれ…ね。おれ、高校卒業して――ひとりでやっていけるようになるまで、ちゃんと男でいる…よ。母さんたちに、生んでもらった礼は…して、出る」
 お…まえ――。
「自分が苦しいほう…選ぶのか」
「兄ちゃん、わかるでしょ。おれ、本当に今…幸せなんだ」
 虎が空にかざす指。
 薄いピンクの爪がキラキラ光る指。
「きれい……」
「だな」
「ネイリストとか、もう(もう)からないかな。男性サイズのかわいい靴職人とかどうだろう。おれ、今だから沙織さんのミュール、履けるんだもんなぁ」
「…………」
 すばらしき将来設計。
 猫みたいななりで、おれの腕の中のかわい子ちゃんはやっぱり虎だ。
 ――あ――
 思いさしたのは、とてもいいことな気がした。
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