契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
食事を終え、お茶までご馳走になり、食器の片づけを申し出ると、「今日は初めてだしお客様でいいのよ。次回からね」と、お母様にやんわりとお断りされた。
夕方六時前に訪問して、あっという間に九時前。
そろそろ帰ろうという雰囲気になった時、お母様が思い出したように「そうそう」と七央さんに声をかけた。
「美鈴ちゃんが帰ってきたのよ、一昨日」
「へぇ、そうなんだ。今度はどこ行ってたんだっけ?」
「しばらく韓国にいたのよ」
横で弾む会話の中に出てきた〝美鈴〟という名前に自然と耳が反応する。
七央さんには妹がいるとは聞いてたけど、妹さんのことかな……?
玄関へと出ていくと、お父様とお母様のふたりも見送りに出てきてくれる。
ドアを開けて石畳の小道を門まで歩いていくと、突然、家の前から「七央!」という女性の弾んだ声が聞こえた。
門の向こうでこちらに向かって頭上に挙げた手をぶんぶんと振っている女性。
ワンレンの黒髪ロングヘアは胸下ほどの長さで、手を振るたびに胸の前で揃った毛先が揺れている。
遠目からだけど、はっきりとした顔立ちの美人だ。
年の頃は私と同じくらいか、少し上くらいか……。