契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 もし、その相談事が私の考えるマイナスの内容だとすれば、丁重にお断りすればいいだけのこと。

 そして、もうお会いしなければいいだけだ。

 今日だけ。ル・シャルルのため。そう言い聞かせて足を進める。

 待ち合わせの駅からすぐの複合施設が近づくと、その入り口前に桐生さんの姿がすでにあり、途端に姿勢がしゃんとする。

 一気に緊張が押し寄せたのは、桐生さんの格好が今日はスーツだったからかもしれない。

 前回の食事会の席では、ネイビーカラーのセットアップに、インナーはホワイトのVネックシャツというきちんとしながらもカジュアルさもある格好だった。

 だけど、今日はなぜかブラックの三つ揃い。

 自分の格好を思わず見下ろす。

 今日はオフホワイトのレースのタイトスカートに、スモークブルーのデザインニットというコーディネートだ。

 ル・シャルルにはもう何度も行っているけれど、そこまで正装を強いられる店ではないと思われる。

 ラフすぎる格好で行くところでもないけれど……。

 もしかしたらこの約束の前に、何かスーツで行かなくてはならない予定があったのかもしれない。

 いろいろと考えすぎてしまっているけれど、約束の場所に来てしまったことを実感していよいよだと覚悟を決める。

 足早に近づいていくと、桐生さんはすぐに私の姿に気が付いた。

< 58 / 246 >

この作品をシェア

pagetop