契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 思わぬ話の展開に無駄にきょどってしまう。

 全力で否定する私を、桐生さんは目尻を少し下げてクスッと笑った。

 横顔からでしか目撃できなかったけど、こんな風に笑う人なんだとどきりとする。


「まぁ、スイーツ目当てでも来てもらえて良かった。会ってもらえないと、話もできなかったから」


 ライトなやり取りの中、本題がちらりと顔を覗かせてわずかに緊張に包まれる。

 私はル・シャルルのスイーツを楽しみに来たけれど、桐生さんは私に折り入って相談があるから今日の約束を取りつけたのだ。

 ル・シャルルは、台場の景色が楽しめるラグジュアリーホテル内に入っている。

 宿泊利用はしたことないけれど、ル・シャルルがこのホテルの二階に入っているので何度も来たことはある。


「桐生さま、お待ちしておりました」


 月に一度訪れているル・シャルルを訪れると、いつも案内で出てくる初老の男性が今日も店頭に現れる。

 小柄でひげを蓄えたその雰囲気が、私の中では執事のような人だといつも密かに思っている。

 常連まではいかないけれど、毎月予約をして来店している私のことを覚えてくれていたようで、特別な目配せを受けた。

 いつもはひとりで来店するのに、今日は桐生さんとふたりで来店。

 どんな風に思われただろうだなんて、ふと考えてしまう。

 落ち着くヨーロピアン調の店内に案内されると、今日は初めて奥のテーブル席に通された。

 今まではひとりだったから、シェフがスイーツを盛り付けたりするのを目の前で見られるカウンター席に通されていた。

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