破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】
 バルコニーに連れ出されたアーシェリアスは、瞬きをしてノアを見つめた。

「どうしたの?」

「これ、受け取ってほしくて」

 僅かに遠くなった楽団の演奏に、ノアの声が重なる。

 手渡されたのは布で可愛らしくラッピングされた袋だ。

「開けて見てもいい?」

「もちろん」

 リボンを解いて取り出すと、現れたのはアンティーク調のレースがあしらわれた花束のブローチ。

「可愛い! 花びらが布なのね。丁寧に染め上げられてて綺麗」

「実はこれ、アーシェがボクのためにスムージーを作ってくれたお礼に用意したものだったんだ。でも、ずっと渡せなくて」

「どうして?」

 それは、何気ない質問だった。

 渡そうとしたら不備でもあったのか、なんていう予想を一瞬した程度。

 けれど、アーシェリアスを見つめるノアの表情が真面目なものに変わる。

「アーシェがザックのことを、気にしてたからだよ」

 真っ直ぐな視線とどこか切ない声色に、アーシェリアスは悟った。

 ノアが伝えようとしていることを。

「いつかボクのことを見てくれるようになったら、ブローチを渡そうって思ってたんだ。でも、このまま待ってるだけじゃ勝てそうにないからやめた」
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