青薔薇の至愛




否定しかけた言葉を呑み込んだ泉先輩が、急に席から立ち上がり、次の瞬間、ギュッと朱ちゃんの腕に手を絡めるから、私の目はいつもより丸くなった。



な、なんで泉先輩。

急に朱ちゃんにくっついたの?!



「そうなの……あなたに別れを告げた後、少し前から気になってた京堂君と付き合ったの。」


「おい、泉」


「ごめん京堂君。この場を乗りきるために嘘ついて!」




朱ちゃんと泉先輩がコソコソと小さな声で話始めるから、私の耳まで届かない。


朱ちゃんの彼女は私なのに。


触らないでほしい。



メラメラと体が嫉妬の炎で燃え始め、藤永君が「このお店、なんだか急に熱くない?」と手で汗を逃がすようあおいでた。




「やっぱ……男か。
 俺のこと『しつこい』からとか、らしい別れ台詞並べてたくせに、結局他の男が好きだっただけじゃねーか。
 そんな女こっちから願い下げだつーの。」



「おい、泉は別に俺のーー……」



朱ちゃんが何かを言いかけた時、絡まる泉先輩の手に力が込められた。



「そう、だからあなたとは終わり。
 私って最低な女なの。」



「はぁー、だる。お前みたいな男好きと付き合うんじゃなかった。
 じゃあな」



心底軽蔑したような目で泉先輩を見つめる男の人は、テーブルに札束一枚置いて出ていった。



「おい泉」


「……嘘に付き合ってもらってごめんね京堂君。」


「いや、そうじゃなくて離れてくんない?」


「あっ……!」



ギュッと朱ちゃんにくっついたままの体を慌てて離す泉先輩。


席を立って見つめていた私の表情を読み取った朱ちゃんが、「はぁ……」とため息を吐いて泉先輩に視線を戻した。






< 126 / 208 >

この作品をシェア

pagetop