青薔薇の至愛
「親、両方とも電話取らないな~。
優のとこは今日も仕事だっけ?」
「うん。私もかけてみたけどやっぱり取らない」
「そうか。まあしょうがない。
そんじゃあ行きますか」
「へ?」
光を無くした空と止まない雨に当てられながら、手を引かれ連れてこられた場所は年季の入った素泊まり宿。
朱ちゃんが手続きを済ませて宿主から部屋の鍵を借りた。
まさか朱ちゃんと外泊することになるなんて……。
互いの家にお泊まりすることだってあるのに、自分の家じゃないせいか妙に緊張してしまう。
「優」
「ひゃ、ひゃい!」
カーテンを少しだけ開いて、窓の外を見ていると、後ろから名前を呼ばれ分かりやすく肩が飛ぶ。
「ぶはっ、なんだそのマヌケな声。
そんな意識すんなよ、こっちまで恥ずかしくなってくるだろ~」
「だ、だって朱ちゃん!今日ずーっとふたりきりなんだよ?」
「いいじゃんいいじゃん。
つまり夜の間は優ちゃんを独り占めできるって事だろ?雨様様だね~」