ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。


 目頭が熱い。何だか視界もぼやけてきた。


「……はい。はい!どうかよろしくお願いします」

「本当?……ああ、良かった。めちゃくちゃ緊張した」


 ハルさんは大きく息をついた。それから微笑みかけながら言う。


「指輪、付けてみてくれる?」

「はい」


 丁寧にケースから取り出し、左手の薬指にはめる。サイズはピッタリだ。

 太陽の光を受けて輝くダイヤモンドと、緑色のアレキサンドライト。


「アレキサンドライトって、光の種類によって色が変わるんですよね」

「よく知ってるね。今は緑だけど、光の種類によって赤くもなる、不思議な宝石。……綺麗だ」

「はい。綺麗な指輪です」

「僕は指輪を付けて嬉しそうにしてる夏怜ちゃんのことを綺麗だって言ったんだけどな」

「さっきの文脈からだと、完全に指輪か宝石のこと言ってるように思えましたけど」

「本当だって。君はすごく綺麗だ」


 ふわり。

 柔らかな風が頬を撫でた。

 リングケースと一緒に手のひらにのせたままだった桜の花びらが、その風でひらりと舞い上がった。



-fin-
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