わたしたちの好きなひと
 わたしが恭太にふられたのは、中3の3月。
 日にちだって、おぼえている。
 結局わたしたち3人がいまいる学校の、合格発表の前日だった。
 なんであんなことを言っちゃったんだろうって。
 悔やんでも、悔やんでも、もう戻れない日。
 わたしと恭太の終わりの日。


 4月になって。
 高校生になったわたしにとって幸せで、つらかったのは、また掛居と同じクラスだったこと。
 掛居は、同情なんて友だちにはなんの意味もないことを、ばかなわたしに教えようとしたんだと思う。
 ひとりだけクラスがちがってしまった恭太をよく教室に呼んだ。
 恭太の話もした。
 だからわたしは、知らないひとのように恭太を見ることは許されなかった。

 新しい制服を着た恭太。
 だんだん増えていく恭太のとりまきの女の子たち。
 日々、日焼けで茶色く傷んでいく髪。
 柔らかみのぬけていく頬。指。

 だれかが恭太の名を呼んでいるのを耳にするだけで、涙があふれた。
 背中だけを、いつまでも目で追いかけた。
 わたしは……
 ふられてから初めて、恭太に恋をしたんだと思う。
 だけど……
 また友だちにもどるには、わたしは恭太が好きすぎて。
 ずっと追いかけ続けた背中。
 やっと追い越した。
 もう忘れたと思ったのに。

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