わたしたちの好きなひと
「だから言ったんだ。おまえのほうが好きだな…って」
 ええぇぇぇっ。
 うそっ!
 まじ?
「そしたらっ?」
 恭太、なんて?
「別に…。なにも……」
 なによ。
 こんなときに、さっきの仕返ししなくたっていいじゃない。
 言っちゃったんでしょ?
 掛居の《本当》。
 言っちゃったんでしょ?
「だから、さ。――ちょっと。むらむらっと。確かめたい気がしたわけだ」
 えっ?
「こんなふうに、おれがシューコの肩を抱いてたら……。やっぱ怒るよなぁ?」
 いやっ!
「なに考えてんのよ!」
 (だめ!)
 だめだよ、掛居。
 恭太を試すようなことをしちゃだめ!
 掛居、きらわれちゃう。
 恭太にきらわれちゃう。
「ぃやっ…たら。ちょっと! やめて掛居!」
 こんなことをしたら傷つくのは掛居だ。
 ダメ!
 ばかなことしちゃダメッ!
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