わたしたちの好きなひと
「よしよし。もう少し寝てようね。――どれ、タオルも替えるか」
秋子(しゅうこ)ってば。それどころじゃないでしょ? 花火よ、花火」
「聞こえてるよ。ちょっと静かに」
 プーちゃんが寝息をたて始めたのを確かめて立ち上がる。
 (ま…た、あいつらぁ)
 どこまで遊んだら気がすむのよ。
 森ちゃんを殺す気?
 廊下もさわがしい。
「みんなこっち! 秋子、いた!」
「…………」
 んもう。
 なんでもかんでもわたしに押しつけるのはやめてよ。
 静かだった部屋はもう集会場だ。
 唇に人差し指を当てて「しぃ――っ」
 こくこくうなずくみんなに、わたしもうなづいてみせる。
「わかった。早く探さないと。ゴジラに見つかったら森ちゃんが再起不能だわ」
 まったく。
 初日にドライブインで爆竹を鳴らして、バスガイドさんに悲鳴をあげさせただけじゃまだ足りないっていうのね。
「ほかのみんなは?」
「1班の男子の部屋」
「なんで? 花火でしょ? だれも外に探しに行ってないの?」
「だって秋子、ロビーにゴジラとバーバがいるんだよ」
 うわ。
 それは最強ディフェンスだな。
「秋子、どうしよう」
 どうしようって……。
 ちょっと待ってよ。
「ねぇ。それじゃ、あいつらどうやって外に出たの?」
「そんな……わかんないよぉ」
< 25 / 184 >

この作品をシェア

pagetop