わたしたちの好きなひと
「…ゃ。だって、わたし……。あの……。え? 4枚って?」
 どういうこと?
「4枚は4枚。4人ってことだよ。…まさか、おれがおまえら以外のために、ここまで親切すると思うか」
「ぃや…だから、あの、…だって――…」
 わたしは絶対、掛居も恭太も関心がない場所って思って――。

  よかったな稲垣、やさしいカレシで。
  そっかチケットかぁ。
  すげえな掛居。
  掛居ぃ。ほれちゃってんねぇ。

 うるさ――い!
 だまれ、だまれ、だまれ。
「だ…めだよ、掛居っ」
 こらえきれなくて目が掛居の肩越しにうしろを見てしまった。
 (あ…)
 恭太が…見ていた。
 ガラス窓に映るわたしを。
「…ったく。太秦(うずまさ)よりましなのは、近いってことだけじゃねぇか」
「…………」
 うそ。
 いいの?
 いいの? 恭太。
 (信…じられない)
 恭太の目が、ふいっと窓からそれた。
「…………っ!」
 いま目があった?
 わたしを……見た?
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