御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 彼の滑らかな髪が頬にかかり平静を装わないと、と思うのに心拍数は上昇する一方だ。

「もっと……幸せにしたいんだ。芽衣はもちろん、早希のことも」

 耳元で囁かれた言葉に胸がドキドキする。わずかに首を動かすと明臣さんの顔を確認する前に耳たぶに口づけられた。

「ん」

 思わず声が漏れる。明臣さんはおもむろに顔を上げ、やっと視界に捉えた彼の表情は打って変わって余裕たっぷりだった。

「そ、それとこの触れ合いは関係あります?」

 極力いつも通りに軽い調子で問いかける。

「嫌ならやめる」

「その切り返しは卑怯だと思います」

 やりとりしている間も明臣さんは私の頬を撫で、指先で耳に触れた。反射的に身をすくめる私を彼は楽しそうに眺めている。

「なぜ? 早希次第だって言わなかったか?」

「な、なんでいつも私の問題に……」

 ムッとして唇を尖らせるとなだめるような口づけが額に落とされた。

「俺はいつでも早希に触れたいと思っているんだ」

 臆面もなく告げられ、さすがに狼狽する。上手くかわすための言葉を探すけれど、明臣さんの真剣な瞳に誤魔化せなくなる。私は渋々白旗を揚げた。

「嫌じゃない……です」

 嫌なわけない。あのときも、今も。明臣さんが好きだから。少しだけ正直になってもいいのかな。

 明臣さんをうかがうと整った顔を歪め、複雑そうな面持ちだった。その表情に私の心が揺れる。至近距離で視線が交わり、彼が静かに唇を重ねてきた。
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