御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 なにかに呼ばれた気がして瞼を開ける。どこかで声が……。

「んー、まー」

 寝惚けていた意識はすぐに覚醒し、私は勢いよく身を起こした。いつもの癖ですぐ隣を確認するが、即座に認識を改める。

 芽衣はベビーベッドだ。ベッドの上を這うようにして芽衣のそばまで行き、首を左右に振りながらぐずりだしている芽衣を抱えた。

 ふわふわの柔らかい髪はほどよく乱れているので、軽く整えてからひとまず授乳して彼女を落ち着かせる。

 今、何時かな? 明臣さんは?

 続いてきょろきょろと部屋の中を見渡すも、明臣さんの姿はない。先に起きたのかな?

 目が覚めて、いるはずの人がいないのってこんな気持ちになるんだ。そばにいてくれたことが夢のようで、不安の混じった寂しさに襲われる。

 軽く頭を振り、私は再びうとうとし始めた芽衣を抱っこしてリビングに繋がるドアのところに向かった。芽衣と別々に寝たからか、昨日の疲れはだいぶ取れてスッキリしている。

 時計を見ると八時前、起きるにはちょうどいい。

「……お前には感謝している。でもそれとこれとは話が別だ」

 ドアを開けようとして、その手を止める。扉越しに明臣さんの声が聞こえたからだ。おそらく電話しているのだろう。
 今、出ていったら話の腰を折るかな? もしも仕事に関する件だったら……。

「結婚はする。そこは譲らない」

 ところが続けて飛び出した発言に私は硬直する。明臣さんが話しているのは、私とのこと? 口調からすると、相手は尊さんだろうか。
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