御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 早希や芽衣と会う回数を重ねる度に欲深さが増していく。今すぐにでも結婚して一緒に暮らしたい。早希が岡崎の秘書をしているのも心中、穏やかじゃない。

 けれど形式的なものはいらないんだ。芽衣の父親としてではなく早希が甘えて寄りかかれる存在になりたい。彼女の気持ちが一番欲しいんだ。

 もどかしさを抱えつつ早希と芽衣と泊まりで出かけたとき、朝早くに電話をかけてきたのは岡崎だった。

『俺としては超優秀な早希を手放したくないんだよね』

「……お前には感謝している。でもそれとこれとは話が別だ」

 早希が岡崎の秘書をしていることが俺はどうしても引っかかっていた。早希を信頼していないわけじゃない。

 ただ、どうしても気に入らないんだ。彼女が他の男を社長と呼んで慕うのも。

『嫉妬深い男は嫌われるぞ? そんなんだから結婚してもらえないんだって。それとも諦めたのか?』

 相変わらずからかい口調を崩さない岡崎に俺はきっぱりと言い放つ。

「結婚はする。そこは譲らない」

『へー。たいした自信だな』

 言い切ったものの不意に自分の中に焦燥感にも似た苦い感情が波立った。

「早希のことは」

 相手が事情をすべて知っている岡崎だからか。続けて俺は普段はわざと無視している思いを口にした。

「……後悔しているんだ、ずっと」

 焦ってもしょうがないのは理解しているが、早希や芽衣と過ごす中で言いしれない自責の念に襲われるときがある。
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