御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「はい。あ、コーヒーでも淹れましょうか?」

「少しゆっくりしたらどうだ?」

 そわそわと落ち着かない早希に苦笑して声をかけると彼女はぎこちなくこちらに寄ってきた。ソファに腰を下ろすと早希は遠慮気味に俺の右隣に座る。

「芽衣、大丈夫でした?」

「問題ない。早希は楽しめたのか?」

 小さく尋ねてきた早希に質問で返すと、彼女は嬉しそうに笑った。

「はい」

 そっと早希の頭に手を伸ばして撫でると、彼女はなにかを突然思い出したかのように目を見開いた。

「あ、そういえば明臣さんと芽衣にお土産があるんです。今」

 勢いよく立ち上がり、持って来ようとする早希の左手を素早くとって離れるのを阻止する。目を白黒させる早希にかまわず強めに手を引き、強引に腕の中に閉じ込めた。

「こっちが先だ」

 彼女の髪の甘い香りが鼻を掠め、細い腰に腕を回し膝の上に横抱きにする体勢をとる。戸惑う早希の額にそっと口づけた。

「こんなときじゃないと早希を独占できないからな」

 頬を撫でながら告げると、彼女の大きな瞳がこちらをじっと捉える。

「そうですか? 最近では芽衣が明臣さんをべったり独占している気がしますが」

 岡崎も言っていたが芽衣にようやく父親だと認識されたのか、帰宅すると抱っこをせがまれ、ひたすらそばに寄ってくるようになった。

 おそらく日中は早希とずっと一緒にいる反動もあるのだろう。俺を見て笑う芽衣を見るとやはり嬉しくなる。
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