御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「私もこうやって明臣さんを独り占めしたかったですよ?」

 改めて彼女を見ると、眉尻を下げ困惑めいた笑みを浮かべていた。おそらく照れもあるのだろう。こんなふうに素直に甘えてくる早希が愛らしくてたまらない。

「娘と妻への愛しさは別物だ」

 伝わるようにまっすぐに彼女を見つめ宣言し、おもむろに顔を寄せると早希の目が閉じられる。

 それが合図のように彼女の柔らかい唇を軽く吸う。触れ方を変えて、音を立て何度も唇を重ねる。次第にそれだけでは物足りなくなってきたところで、不意に早希と至近距離で目が合った。

「……父も、そうだったんでしょうか?」

 消え入りそうな声で漏らされた疑問は無意識だったのか、早希はわずかに気まずそうな顔になる。

 早希の母親の元に改めて結婚の挨拶に行った際、早希の父親の遺品の中からこれが出てきたと箱を手渡された。

 有名銘菓の空き箱で作りはしっかりしているが、ずいぶんと年季が入っている。中を開けると、そこには古ぼけた紙がいくつか入っていた。

 幼い頃、早希が父の日に描いた似顔絵や送った手紙、小学生になって小遣いで買って贈った誕生日プレゼントのペンなどが仕舞われていたのだ。

 なんでも早希の父はひとりでよくこの箱を開けて中を見ていたらしい。新しい家族には覚えのないもので、早希の母親に渡されたが今まで中身を開けていなかったそうだ。

 今回、改めて中身を確認し、早希に渡すべきだと判断したらしい。
< 146 / 147 >

この作品をシェア

pagetop