御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 先ほどよりも長い口づけの後、優しく唇を()まれながら社長は囁く。

「夢中にさせた早希も悪い」

 反論も肯定もできない。させるつもりもないのかも。

 言葉はキスで封じ込められ、経験の差とでもいうのか結局、彼に翻弄されてばかりだ。

「後悔しているのか?」

 口づけの合間に問いかけられ私は弾かれたように社長から離れる。ちらりと視線を横にすると左手にぬいぐるみ、右手にブロックを持った芽衣がどちらも床に叩きつけて楽しそうにしていた。

「……芽衣の前でそれを聞きます?」

 口を尖らせて聞き返すと社長は目をぱちくりとさせる。

 そこで視線に気づいたのか芽衣がこちらに寄ってきた。私は一度テーブルの上に花を置いて芽衣を抱き上げる。

「社長に対して勝手なことをしたという申し訳なさはありますけれど、もう芽衣がいない人生なんて考えられません」

 きっぱりと言い切ると社長は曖昧に微笑んだ。私はテーブルに置いた花を再び手に持ち、少し距離を空けて芽衣に見せる。

「ほら、芽衣。お花だよ。綺麗でしょ?」

「あー。たぁ!」

 早速興味を示した芽衣は手を伸ばし花に触ろうとした。それを阻んでいると社長が芽衣の脇の下に手を入れ、自分の方に引き寄せる。芽衣はおとなしく身を委ねていた。

「ありがとうございます。このお花、芽衣の手が届かないところに飾らせてもらいますね」

「ああ」

 ひとまずこの花をキッチンへ持っていこうと足を向ける。
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