御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 日中はともかく夜は芽衣が寝た後、リビングで作業するため明かりが漏れるのを防ぐ役割も担っている。

 いい意味で、気配や物音も伝わるのでなにかあってもすぐに気づけるので重宝していた。

 社長は眠たそうな目をしている芽衣の頭を優しく撫でる。

「おやすみ、芽衣」

 芽衣の頭から手を離した彼は、続けてまったく同じ調子で私の頭に手を置いた。

「早希もお疲れ。悪いな、忙しいところ無理言って」

「い、いえ。失礼します」

 芽衣を抱っこし、そそくさと移動する。ベビー布団に芽衣を置いて、いつもなら次に自分の布団を隣に敷くのだけれど今日は真っ先にロールスクリーンを下ろした。自意識過剰なのはわかっている。

 でも、今までずっと芽衣とふたりだけだったから他に誰かいると思うとどうも気恥ずかしい。

 その一方で明かりを落とし芽衣を寝かしつけながら、スクリーン一枚を隔てた向こう側に誰かの気配があるのは安心できた。

 ときどき聞こえる生活音は耳障りではなく、むしろ心地よい。このまま芽衣と眠ってしまいそうになるのを必死に堪える。

 しばらくして芽衣の寝息が規則正しくなったのを感じ、私はつらつらと起き上がってそっとロールスクリーンをめくってリビング側に出た。眩しさに一瞬眉をしかめる。

「眠ったか?」

「はい、お待たせしました」

 心なしかお互いに小声で会話する。食べ終えた社長はソファで本を読んでいた。キッチンに足を進めると食器は律儀に流し台まで運んでくれていた。
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