御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「どっちがよかったですか?」

 無意識に浮かんだ質問が口を衝いて出た。明臣さんが軽く身動(みじろ)ぎして反応したので私は慌てて取り消す。

「なんでもありません。すみません」

 早口に捲し立て、逆に自分の中で口にした問いかけが広がっていく。

 明臣さんにとって私は、関係があったにせよ結婚するからと仕事を辞め、何事もなく自分の人生から退場してくれていた方がよかったのかな?

「早希が今、こうして俺の腕の中にいることに感謝しているんだ」

 錯綜する思考は彼の発言で中断した。

「……それは」

 芽衣の存在とは関係なく?

 続きはキスで口を塞がれて声にならない。さっきとは違い、明臣さんは私をきつく抱きしめて離れることを許さなかった。

 長い口づけに息も胸も詰まりそうになる。心臓がバクバクと音を立て始める私を、彼は抱きしめたまま体勢をずらして自分の下へと滑り込ませた。

 ベッドを背にしてますます逃げられない。強引なのに乱暴さはなく、今もキスをしながら私の頬を優しく撫でる。

 だめ。流されちゃだめ。

 必死で自分に言い聞かせていると、ゆるやかに唇が離れ、額がこつんと重ねられる。

「早希こそ……こうやって俺を受け入れるのはどうしてなんだ?」 

「……どう、して?」

 とっさに頭が働かず、オウム返しをする私に明臣さんは切なげな表情で続ける。

「芽衣の父親で、愛し合う必要があると感じているからか?」 

 彼の問いかけに私の頭は真っ白になった。正解を必死に探すが見つからない。
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