今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「後者かもしれないな」

つまり、救急の患者がたくさん運び込まれてくるってこと?

緊迫した空気を感じとり、じわりと背中を冷気が走る。

院長先生とふたりでエレベーターへ乗り込み、一旦二階で降りる。渡り廊下をつたい外来棟へ。

救急部に続く階段を降りると、すでにその場は慌ただしかった。

救急隊員とともにストレッチャーに乗せられた患者が運ばれてくる。搬送用の呼吸器をつけていて、衣服は血に染まり、手首は力なくだらんと垂れていた。

「交差点で車複数台が絡む事故発生! 重傷患者搬送中!」

「意識レベル200! 頭部より出血!」

救急隊員や医師の声が飛び交う。切迫した光景に言葉を失って立ち尽くした。

院長先生が私を正気に戻そうとするかのように、ポンと肩を叩く。

「想像以上に忙しくなりそうだ。私も行ってくるよ。今日は本当にありがとう。気をつけて帰ってくれ」

私にそう感謝の言葉を告げると、足早に処置室へと入っていった。

ひっきりなしに響く救急車の音。ここにいたら邪魔になる、そう感じて緊急外来を出ようとする。

正面玄関へと続く通路を歩き始めたところで。

「――ひくっ――」

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