今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
すすり泣く声が聞こえてきて、私は足を止めた。

振り返り辺りを見回せば、柱の陰に隠れて小さな女の子が泣いていることに気づいた。

ちょうど死角になっていて、歩いてきたときにはわからなかった。

迷子だろうか、私は慌てて女の子に駆け寄り、話しかける。

「ねぇ、どうして泣いているの? お父さんかお母さんは?」

女の子は泣きながら救急外来を指差す。もしかして、ご両親はあそこに運ばれて……?

「お父さんかお母さんが怪我をしているの?」

恐る恐る尋ねると、女の子はこっくりと頷いた。

「おかあさんが……つれていかれちゃった……ここにいてって、いわれて……」

ストレッチャーで運ばれてきた患者のことを思いだし、蒼白になる。

もしもあれがこの子のお母さんだったとしたら――。

どうか無事に助かるといいのだけれど。祈るしかない。

そして、この子は今、ひどい恐怖を味わっているに違いない。

なんらかの事故に遭った上に、お母さんは怪我。自分はこんな場所でひとりにされて、さぞ心細いだろう。

「……じゃあ、お姉ちゃんと一緒に待ってようか」
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