今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「じゃあ、私も、どこへ行っても通用するライターにならなきゃいけませんね。関西弁、馴染めるかしら……そういえば、悠生さんは全然関西弁じゃありませんね。あ、東京での暮らしが長いから……」

いっそう先回りされ、唖然とする。しかも、すでに話はどこか別の方向へ飛んでいる。

どうやら彼女はすでに俺についてくることを受け入れてくれているらしかった。

彼女が関西行きを拒んだら、そんな憂慮が杞憂だったと気づく。

「君って、本当にポジティブだね」

安堵からクスクスと笑ってしまう。

彼女は意味がよくわからないようで、キョトンと目を瞬かせた。

「杏。大好きだよ」

無防備なその唇に優しくキスをする。彼女は少しはにかんで、珍しく積極的に俺の首筋に腕を回してくる。

ひとりで留守番をするのが寂しかったのだろうか、珍しく仕事も余裕があると言っていたから、時間がありすぎて落ち着かなかったのかもしれない。

「……私、も、好き……」

たどたどしい愛の告白に、まいったなと内心頭を抱える。

今すぐ抱きたい、めちゃめちゃにしたい。こんなもどかしい期間があと半年以上続くのかと思うと、気がおかしくなりそうだった。


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