今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「おかえり。パーティーは楽しめた?」

育児がひと段落した悠生さんは、リビングのソファに座ってくつろいでいた。

私のもとへ来て手荷物を受け取り、トレンチコートを脱がせてくれる。

「楽しかったけど、柚姫が心配で」

「柚姫もちょっと不安そうだったな。いつもよりグズッてた。俺も少し焦ったよ、なかなか泣き止んでくれなくて」

ふふふ、と笑みがこぼれる。悠生さんの焦った姿も見たかったなと、そんなことを思ってしまう。

「眠って三十分くらい経ったかな。よく泣いて疲れただろうから、あと二、三時間はぐっすり眠るんじゃないかと思うけれど」

「じゃあ、今のうちに私はお風呂に入ってくるね」

クラッチバッグとコートを持って自室のクローゼットへ向かおうとすると、悠生さんが「待って」と私の肩に触れた。

「ドレス姿の綺麗な君をもっとよく見せてよ」

左手を持ち上げて、甲にそっとキスをする。薬指には、悠生さんからもらったダイヤを加工して作った、極上の婚約指輪が輝いている。

「指輪もよく似合ってる。ちゃんと片時も離さず身につけていた?」

「それは、もちろん……」

失くしたら嫌だし、と心の中でつぶやくも、そういうことを言いたいのではないのだろう。
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