今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「顔を見て、すぐに君だとわかったから」

「え?」

わかったって、どういう意味だろう? 私が取材に来たライターだって、わかったということ?

ただベンチに座っていただけで、なんのヒントもなかったはずなのに。

「……私たち、初対面、なんですよね?」

「ああ。そうだった」

「え?」

今の言い方、なに? さっきの会話をあっさりと覆され、唖然とする。

まさか、初対面と言っていたのは嘘なの?

とはいえ、記憶を辿ってみるけれど、西園寺先生の顔なんて全然出てこない。こんなに目立つ人、一度会えば忘れないと思うのに。

じぃっと彼の顔を見つめながら歩いていると。

入院棟の入口の段差に気づかずに、思いっきり足を引っかけてしまった。

「きゃっ」

「――っ!」

転びそうになったところを、すんでのところで彼に支えられる。

危うくコンクリートに顔から突っ込んでしまうところだった。

「危なっかしいなぁ、あんずちゃんは」

ああ、いきなりドジを踏んでしまった……彼にクスクスと笑われ、恥ずかしくて顔が熱い。
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