今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
丁度手術室の扉から院長先生が入ってくるところだった。西園寺先生の正面に立つ医師と話をしたあと、場所を交代する。

これで西園寺先生の負担が少しでも減るといいのだけれど。

「ここにいてもかまわないけれど、俺はまだ仕事があるから病棟に戻らなきゃ。荷物も院長室に届けなきゃならないし……ひとりでも大丈夫?」

「はい。行ってきてください。私、ここにいますので」

「手術が終わった頃にまた迎えに来るよ。疲れたら途中で帰ってもいいからね。あ、帰るときはゲストカードを受付か守衛に渡しておいて」

そう言い残し、眞木先生はモニター室を出ていった。

ひとり残された私は、隣の部屋から伝わってくる緊張感に押しつぶされないように足を踏ん張る。

院長先生が助手として入ったことにより、モニターに映る手の動きが滑らかになったような気がする。

手術室のピリピリした空気も多少は和らいだかも。

こうやって、西園寺先生は数えきれないくらいたくさんの命を預かって、救ってきたのだ。

昼間に会った車椅子のご婦人の笑顔を思い出し、胸がきゅっと疼く。

いつの間にか、彼の真剣な立ち姿に見惚れていた。勝手に鼓動が高鳴りだす。

彼が命を救う瞬間が見たい。

そう祈りながら、長い長い手術をじっと見守っていた。


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