今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
『手術後の彼の姿を見れば、どれだけ本気で患者さんと向き合っていたかがわかるよ』――眞木先生の言葉が今さら腑に落ちた。

「生死をかけた大手術を終えたあとだ。容赦してあげて」

眞木先生が私をなだめるように肩を抱く。「もう帰ろう」と手術室前のエントランスから遠ざかった。

後ろ髪を引かれ振り向けば、まだ険しい顔をした西園寺先生がいる。確かに今の彼は怖い。 

けれど――。

ライターとしての血がざわりと騒ぎ出す。私が取材対象に求めていたのは、こういう姿だったんじゃないのか。

『仕事に恋するメンズ』――その企画名の通り、真剣に仕事に向き合う男性を特集する記事である。その姿が誠実であればあるほど、読者は魅力を感じてくれる。

今の彼を記事にしたい。そんな欲求が湧き上がってきて、私は眞木先生の手をほどき、西園寺先生に追い縋った。

「あの、西園寺先生!」

彼が驚いた顔で私を見下ろす。

「お願いです。少しだけでもインタビューをさせてもらえませんか?」

「……今?」

西園寺先生が鬱陶しげに顔をしかめる。

眞木先生が慌てて追いかけてきて「白雪さん、さすがに今は……」と私をなだめた。

「失礼を承知で、どうかお願いします! 今の西園寺先生にお話をうかがいたいんです。命と向き合ってきた今だからこそ聞ける話があるんじゃないかって……」
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