碧色の恋。


今日の夕日はなんだかいつもより綺麗に見える気がする。
3階の図書室に行けばより近くで見えるかもしれない。


階段を駆け上がり、図書室に向かおうとした時だった。


「…碧くんっ」


手前にある空き教室から七瀬くんを呼ぶ声が聞こえた。
見てはいけないと分かっていても、顔が反射的に教室の方を向いてしまう。


「…っ」


お昼休み教室に来たあの黒髪の先輩が、七瀬くんに抱きついている。けど、七瀬くんは嫌そうな顔をしている。


「あっ…」


ふと七瀬くんがこっちを向いたため目が合ってしまった。
やばい、どうしよう。覗きだと思われちゃう。私は図書室に向かうことなく、階段を駆け下りた。


教室に自分のスクールバッグを取りに行き、そのまま家へと向かった。
< 10 / 124 >

この作品をシェア

pagetop