ハージェント家の天使
 時間や規律に厳しいらしく、モニカが怒られていた記憶もあった。
「立ち話もなんだし、応接間に案内するね」
 モニカはリュドを連れて、応接間に案内したのだった。
 
「お待たせ、お兄ちゃん。ニコラを連れて来たよ」
 モニカはニコラを連れて来ると、応接間で待っているリュドの元にやってきた。
 モニカの後ろからは、何かあった時に備えてアマンテが控えていた。
「お兄ちゃん。この子が娘のニコラだよ。ニコラ、こっちは私のお兄ちゃんのリュドヴィックお兄ちゃんだよ!」
 ニコラはモニカに掴まったまま、リュドをじっと見つめていたのだった。
 リュドはニコラの側に来ると、顔を覗き込んだのだった。
「モニカとよく似ているな。可愛い」
「お兄ちゃんも、私と似てるって思うんだ」
 モニカとリュドは顔を見合わせて、笑い合ったのだった。

「そうだ! お兄ちゃんもニコラを抱いてみる?」
「いいのか?」
「勿論! ねっ、いいですよね?」
 モニカが後ろに控えていたアマンテに声を掛けると、アマンテは頷いたのだった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 モニカはリュドにニコラを渡すと、リュドはおっかなびっくり抱いていたのだった。
 いつものように、モニカがリュドにニコラの抱き方を教えていた時だった。
 突然、ニコラは火がついたように泣き出したのだった。

「お、おい。モニカ。これは……」
「ああっ! そんなに動かないで、お兄ちゃん! 私が受け取るから!」
 ニコラが突然泣いた事に慌てたリュドは、ニコラを抱いたままオロオロした。
 モニカはニコラを預かると、そのまま腕の中であやしたのだった。
「す、すまない」
「ううん。こっちこそ驚かせてごめんね。マキウス様以外の男性に抱かれた事がないから、慣れていないのかも」
 思い返すと、ニコラはマキウス以外の男性と触れ合った事がないように思う。
 普段、屋敷でニコラに触れるのは、モニカと乳母のアマンテだった。
 たまに、遊びに来たヴィオーラや他のメイドが触れる事はあれど、男性には触れられた事が無かったように思う。

「そうなのか? 姪にまで嫌われたのかと思って、不安になったんだが……」
「そんな事はないよ……。それよりも、姪にまでって?」
 モニカが首を傾げると、リュドはバツが悪いような顔をした。
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