解けない愛鎖
「あたしはともかく、ヒロキのほうに全くその気がなかった。ヒロキは自分の行動を他人に縛られたくないタイプだったから」
友人たちに未練を悟られないように明るく話したつもりだけど、微妙に引き攣る頬をうまく隠せたかどうかはあまり自信がない。
「たしかに、リナとケンカして別れ話することになるキッカケって、いつもヒロキの浮気が原因だったよね。見た目も人当たりもいいから、ほっといても女が寄ってきちゃって」
「そうだね。その度に『本気なのはリナだけだ』って言ってくれるくせに、あたしが結婚をチラつかせたら話をそらして逃げちゃうし。浮気癖は何年経っても治んないし。面白い仕事の話がきたら、何週間もあたしなんてそっちのけだし。あー、このまま一緒にいてもヒロキとの将来はないんだなって、ようやく一年くらい前に目が覚めて。それからは連絡もとってない」
「ヒロキからの連絡は?」
「それも、ない、かな」
考えなくてもわかることだったけど、わざとゆっくりと溜めて否定する。