路地裏の唄
「…あ、おかえりなさい」




二人が入って来た事に気付いたのか奥からまた緋奈咫の声。

顔を出すとやはり赤髪の少女は感情のあまり読めないくりくりとした瞳をこちらに向けていた。



「あ、うん。ただいま。
何してるの?」




少女が向かう先には先日原十郎が修理(リペア)する時に乗っていたベッド型の作業台。
その上には損傷の激しい見知らぬケータイが横たわっていた。


ずば抜けて長身の原十郎程ではないが一般より大分高い背丈にある程度筋肉のついたボディ。
後ろで箒のようにまとめられた硬そうな髪は色素を通していないかの如く白い。

意識がないまま半開きになった瞳は血のような朱だった。



「ヒナが拾って来た。
ストールズの"ツール"だよ」

「"ツール"?」


バインダーに何やら細かい書き付けを続ける現樂に首を傾げる。

"ストールズ"とは正式な呼称は"アンインストールズ"。
集団意識がないため統率がなく単独で行動するアンインストール分子達がある頃から集団で人やケータイを襲うようになった。

その原因、分子達のコントロールをしているのが"アンインストールズ"と呼ばれる組織の主犯格である"メーカー"と言う者達だった。



「"ツール"はマスターレスとなったが為にメーカーに拾われ改造されたケータイ達を総称します」

「マスターレスって…マスターがいないって事?」



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