パラダイス、虹を見て。
 嘘であってほしいという思いが強かった。
 帽子で見えにくいと感じても。
 それでもアラレさんの血の気が引いていくかのように見えた。

 自分の頭の中では、「何だよ、それえ」と言って。
 笑い飛ばしてくれるのを期待した。
 アラレさんは、麦わら帽子を脱ぐと。
 じっと私を見る。

「気持ち悪いって思ってるでしょ?」
「へ・・・」
 明らかに怒っているのがわかった。
「もう、いいよ。手伝わなくて。屋敷、戻れば?」
 アラレさんが屋敷に向けて指さすので。
 黙ると。
「じゃあ、俺が屋敷戻る」
 そう言って、アラレさんが走って行ってしまった。

 残された私は、ただ。
 立ち尽くすことしか出来なかった。
 今、走れば間に合う。
 でも、身体が動かない。
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