パラダイス、虹を見て。

 寝たふりをした。
 衝撃を受けたところで、どうすればいいのか。
 誰も教えてくれない。

 ここは秘密の館と呼ばれる屋敷。
 ついこの間まで女性禁制。
 それは、ヒサメさんが女嫌いだから。
 …じゃなかった。

「あれ、カスミちゃん顔色悪いね」
 いつもの習慣というのが怖い。
 自分で無意識に着替えて畑に来てしまった自分を呪う。

 鍬を持ってアラレさんは土を耕していた。
 私は、昨日のヒサメさんの言葉を思い出すと。
 急に心臓がバクバクと鳴るのを感じた。

 太陽が出たかと思えば、今日は朝から曇ってきて。
 少しだけ肌寒いと感じた。
 ぼんやりと、何もしないで。
 ただ、アラレさんを見てしまう。
「今日はお芋ちゃんを植えようか」
 ニコニコ笑いながら話しかけてくるアラレさんの言葉が、あまり耳に入ってこない。
「はい」と相槌を打って。
 手を動かしてみるけど、集中できない。
 何をやってみても集中できないので。
 屋敷に戻ろうと思って、重い腰を上げると。
 バチッと静電気が走ったかのように、アラレさんと目が合った。
 その瞬間、何も考えないで。
 勝手に、口から零れ出ていた。


「アラレさんって、ヒョウさんの恋人なんですか?」


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