パラダイス、虹を見て。
 17歳の時、実の父親に引き取られ。
 一年間、侯爵家に嫁ぐためにあらゆることを勉強させられた。
 その中にダンスの練習もあったし。
 最初の夫も、二番目の夫の時も。
 何度か舞踏会に参加したことはあるけど。
 でも、でも、でも。
 慣れない…。本当に心の底から行きたくない。

「行きたくない」だなんて、
 言えるわけない。
 あんな切ない顔で、
 アラレさん、私を見てこないで・・・

「これで、いいのだろうか」
 思わず、独り言を呟いている自分。
 鏡の前でドレスアップした自分を見ると。
 化粧をしたにも関わらず、どこか青白かった。
 黄色いドレスを用意してもらったけど。
 着てみると幼稚さが否めない。

 今までは専属のコーディネーターが居て服を何着も作ってくれて。
 侍女と一緒に決めてきたというのに。
 ヒョウさんが用意してくれたのは、たった一着。
 行きたくないと何度もため息をついていると。
 ドアがノックされる。
「おい、女。準備は出来たか?」
 聞き覚えのある声に思わず、「あー」と小さく叫ぶ。
 よりによって、会場まで送ってくれるのはイナズマさんだ。

「今行きます」
 大声を出して。
 もう一度、鏡でチェックをして。
 ため息をついてドアを開けた。
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