パラダイス、虹を見て。
 世界最強。
 あの人達を10秒で倒したっていうのか?

「ごめんね。ヒカリ、嫌な思いさせて」
「え、いいえ。大丈夫ですけど。モヤさんは大丈夫なんですか」
 全速力で走った後。
 モヤさんの知り合いのところへ預けていた馬の元へ戻って。
 ゆっくりと秘密の館へと帰ることになった。

 一瞬の出来事に。
 どう反応していいのかわからない。
「僕は大丈夫。あんなの雑魚(ザコ)だから」
 雑魚(ザコ)と言い切ったモヤさんに、ぞっとする。
 こんな華奢で少年のようなキラキラした瞳をしているのに。
 どんな力が秘められているというのか。
 知りたいけど、質問してはいけない気がして。
 それ以上は訊かないことにした。

「ヒカリ、ちょっとアトリエ寄っていい? 見せたいものがあるんだ」
「あ、はい」
 秘密の館から少し離れたところにあるという、モヤさんのアトリエ。
 話には聞いていたけど。
 行っていいんだ。

 小一時間ほど経って。
 そろそろかなと思っていると。
 急にモヤさんは馬を走らせた。
「正面から行くほうが早いや」
「正面?」
 小道を走り抜けて。
 公道へ出たかと思えば。
 宮殿の門の前で、モヤさんは止まった。
 門番の騎士団2人に思いっきり睨まれる。

「え、どこ行くんですか」
「あ、ヒカリ。ここからは馬を降りて行こう」
 私の質問は無視され、モヤさんに言われた通り馬を降りる。

「宮廷画家のモヤです。こっちは助手」
 門番にそう言うと。
 門番2人はじっとこっちを見た後、
「門を開けろー」
 と叫んだ。
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