花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「……」
西さんは、俺たちの住む街から少し離れたところにある大きな大学病院に入院しているらしい。窓の外を見ても、知らない景色が流れていくだけ。
「もう少しで着きますよ」
「あ、はい……」
本音を言うと、少し不安なのだ。この先に本当に西さんがいるのか。想像ができない。
「大学病院でしか対応できないから、こんな遠くまで来なきゃいけないんですね」
ただでさえ体調が悪いのに……というと、先生は少し考え込むそぶりを見せた後にぼそりと言った。
「大学病院でも対応できていないのよ。これまで誰も経験したことのない病気だから」
治るといいのだけれど、と不安そうにつぶやく先生。
その言葉にどう返事をしていいかがわからなくて黙っていると、目の前に大きな建物が現れた。
白い壁、太陽の光を受けてギラギラと光る四角い窓。車を降りて近くに寄ってみると、色々な器具があることをその窓を通して確認できた。
病院ってちょっとだけ、不穏な空気がする。
「さ、宗谷くん。こっち」
手招かれて広い建物の中に入る。広いロビーで待っているように言われて大人しく待っていると、看護師さんが何か札のようなものを持ってこちらへやってきた。
「初めまして。西華香さんとの面会をご希望の方ですよね?」
「あ……はい」
「これを首からさげていて下さい。部屋に入るときは、この札をスキャナーに差し込んでくださいね」
「わかりました」
これほど厳重なシステムが敷かれているのは、ここが大学病院だからなんだろうか。
それとも、西さんの病状が特殊だから?