昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
花火大会はいつも家の窓から小さな花火を眺めているだけだった。
 今は手を伸ばせば花火を掴めそう。一瞬の輝きがこんなに綺麗なんて……。
「花火、こんなに大きく見えたの初めてです」
 感動で瞬きするのも忘れそう。
 興奮しながら鷹政さんに伝えたら、彼もジッと花火を眺めて言った。
「俺もこんなにじっくりと見たのは初めてかもしれないな」
 彼の瞳に花火が映る。
 花火も綺麗だけど、やはり鷹政さんは立っているだけで絵になって、うっとりと見惚れてしまう。
「凛? どうした?」
 私の視線に彼が気付いて慌てて目を逸らした。
 鷹政さんがとてもカッコいいから……なんて今は恥ずかしくて言えない。
 彼に出会った頃は言えたのに、なんで?
「凛?」
 名前を呼ばれてハッとしたら、鷹政さんの顔がすぐ目の前にあって心臓がトクンと高鳴った。
 そんな綺麗な顔で私を見つめないでほしい。
「な、なんだか今日は盆と正月が一緒に来たみたいで嬉しくって」
 咄嗟にそうごまかすと、彼はフッと微笑した。
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