昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「しばらくこのままでいるか」
 凛の頭をそっと撫で、空に浮かぶ丸い月を眺めていたら右京に話しかけられた。
「あなたがそんな優しい表情をしているのを初めて見ました」
「俺はいつでも優しいが」
 そんな軽口を叩けば、彼はあからさまに顔をしかめる。
「かなり自分に甘い基準ですね。で、その娘が未来の総帥夫人ですか?」
「いや、単に借りがあるから連れてきただけだ」
 なにか食べ物でいなりの礼をしようと思った。
 俺の言葉を聞いて右京はフッと笑みを浮かべ、凛がつけている指輪に目を向けた。
「その説明、説得力に欠けますよ。彼女がつけている金の指輪、昔誰かに聞いたことがありますが、青山家に代々伝わるものでしょう?」
「確かにそうだが、俺が彼女に指輪をやった時、まだ彼女は小さな少女だった。伴侶にしようとしたのではない」
 似たようなやり取りをじいさんとしたような気がする。
 俺の話を聞いても右京は納得しなかった。
< 122 / 260 >

この作品をシェア

pagetop