昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
婚約者でもない男と夜を明かせば、彼女に変な噂が立ってしまう。
 そんな俺の心情を読んだのか、伊織はクスリと笑う。
「帰したくないって顔してますよ」
「月が綺麗だからもっと見ていたいだけだ」
 ボソッと下手な言い訳をする俺に、彼は穏やかな目で言った。
「彼女をうちで引き取ってはどうです? あの家に帰しても、幸せにはなれませんよ」
 伊織も暗に俺に凛と結婚しろと言っている。
 確かにあの家にいては保科伯爵にひどい扱いを受けて、彼女は辛い思いをするだろう。ずっと……。
 しかし、俺はわざとはぐらかした。
「彼女は保科伯爵の娘だ。身元もしっかりしている。幸太のようにうちで預かるわけにはいかない」
「結構頑固ですね。ご自分の気持ちを認めれば楽になるのに。結婚に対する否定的な考え方をそろそろ改めませんか。大丈夫です。凛さまは清鷹さまも気に入っておられます。あなたのお母さまのようなことにはなりません。一族から孤立はしませんよ」
 結婚だけではなく、恋愛も俺には不要だと思っている。
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