昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「保科伯爵は?」
 少し遅くなってしまったし、いたらひと言挨拶でもして帰ろうと思ったのだが、凛の弟が申し訳なさそうに答えた。
「生憎もう就寝していまして。すみません」
「そうか。彼女を起こすのはかわいそうだから部屋まで運びたいのだが」
 そう申し出ると、彼は小さく頷いた。
「本当によく寝てますね。姉の部屋はこちらになります」
 すでに凛の部屋は知っていてたが、もう深夜というのもあったし、彼女が未婚であることを考えて断らなかった。
玄関を上がると、凛の弟のあとについて彼女の部屋に向かう。
 二階の奥にある凛の部屋は六畳くらいの広さで勉強机とベッドと本棚があるだけの質素な部屋。英語が堪能なだけあって、本棚には洋書が並んでいる。
 ベッドにそっと凛を寝かせると、彼女の弟は好奇心に満ちた目で俺に尋ねた。
「部屋まで運んでいただいてありがとうございます。姉はあなたのことを会社の人と言っていましたが、本当は姉とはどういう関係なんですか?」
「彼女の弁当のファンってところかな」
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