昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「凛、おはよう。今日も暑いわね……って、あなた全然汗かいてないのね」
ハンカチで額の汗を拭いながら私の向かい側の机に牛革のクリーム色のバッグを置くのは、同僚にして私の女学校時代からの友人、松平春子。
彼女は侯爵家の次女で、二十三歳。お金持ちで、家に家令もいる正真正銘のお嬢さまだ。
私と違って働いているのはキャリアのため。
ゴシップ好きだけれど、気さくで話しやすく、彼女とは昔から馬が合った。
「おはよう。私は汗をかきにくい体質みたい」
笑顔で挨拶を返したら、彼女は羨ましげに私を見た。
「もう私なんか汗で化粧が落ちるのよ」
「私は冬は寒くて霜焼けができちゃう」
「霜焼けは痒そうね。あっ、モサ男が来たわ。モサ男も全然汗をかいてないわね」
私の話にクスリと笑いながら相槌を打った彼女が急に声を潜めた。
『モサ男』というのは、先週末に中途採用で雇われたうちの男性社員。名前は森田といって年は三十前後。髪の毛がもっさりしていて前髪も長く、メガネをかけているから、どんな顔なのかあまりよくわからない。
ハンカチで額の汗を拭いながら私の向かい側の机に牛革のクリーム色のバッグを置くのは、同僚にして私の女学校時代からの友人、松平春子。
彼女は侯爵家の次女で、二十三歳。お金持ちで、家に家令もいる正真正銘のお嬢さまだ。
私と違って働いているのはキャリアのため。
ゴシップ好きだけれど、気さくで話しやすく、彼女とは昔から馬が合った。
「おはよう。私は汗をかきにくい体質みたい」
笑顔で挨拶を返したら、彼女は羨ましげに私を見た。
「もう私なんか汗で化粧が落ちるのよ」
「私は冬は寒くて霜焼けができちゃう」
「霜焼けは痒そうね。あっ、モサ男が来たわ。モサ男も全然汗をかいてないわね」
私の話にクスリと笑いながら相槌を打った彼女が急に声を潜めた。
『モサ男』というのは、先週末に中途採用で雇われたうちの男性社員。名前は森田といって年は三十前後。髪の毛がもっさりしていて前髪も長く、メガネをかけているから、どんな顔なのかあまりよくわからない。