昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】

「た、た、鷹政さん、冗談ですよね？」
　私が確認すると、彼は無表情で答えた。
「冗談だ」
　からかわれた。
「たーかーまーさーさーん、こんな時に冗談言わないでください」
　じっとりと鷹政さんを見れば、彼は小さく笑って謝った。
「悪い。今度美味しいレストランに連れていってやる。なにが食べたい？」
　彼の質問にいろんな食べ物が頭に浮かぶ。
「ビフテキです！　やっぱりお肉って美味しいですよね！」
　溢れんばかりの笑顔で答える私に、彼は頬を緩め、「その顔でいい」と口付けた。
　その甘いキスに心の中の不安が消えていく。
　ずっとこうしていたい。
　彼の胸に手を当てながらキスに答えていたら、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえて、伊織さんが現れた。
「鷹政さま、凛さま、時間ですよ」
　船上パーティの開始時刻は午後七時。
　ちょうど夕日が水平線に沈むところで、空が赤く染まってとても綺麗だ。
　じっくり眺めていたいところだが、今の私にはそんな余裕はない。