昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 父は私には冷たかったが、私の父はあの人しかいない。
 弟の話では、父はもうギャンブルをすることはなくなったそうだ。
 それで、家で暇を持て余し、私が育てていた野菜の世話をしているらしい。
 父に畑のことはバレたけれど、もう多分一生私は父に怒られることはないだろう。
「凛? 具合が悪いのか?」
 父のことを考えていたら、鷹政さんの顔が目に映った。
「いえ。身体が強張ってしまって」
 ダメ。感傷的になってはいけない。
 今日は大事な日。
 ぎこちなく笑う私に彼は温かい目で微笑んだ。
「俺が一緒にいる。お前に害をなす者がいれば瞬殺するから心配するな」
 彼の言葉に一瞬キョトンとする。
「鷹政さん、その冗談笑えないです」
 じっとりと見て返したら、彼は真面目な顔で否定した。
「いや、本気だ」
 よく見るとその目は笑っている。
 私もつられて笑ってしまい、もう余計なことは考えなかった。
 壇上に鷹政さんと私が上がると、会場にいた人々が急に静かになった。
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